t-miyazooの宇宙日記

宇宙ビジネスと仕事について書いていきます

宇宙機器開発におけるJAXA設備の利用について

筑波宇宙センターのロケット広場
出典:(C)宇宙航空研究開発機構(JAXA)

はじめに

私の記事を読んでくださる方の中には、人工衛星やロケット構成部品を作っている方や、これから作ろうとしている方もおられると思う。

そのような方たちに向けて、JAXAの設備利用について私が体験したことをまとめたので、参考になれば幸いだ。

また、宇宙産業に関わりの無い方でも、JAXAがどのような取り組みを行っているのかをお伝えし、その活動に興味やご理解を得られたら嬉しく思う。

JAXAとは

JAXAとは「国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(うちゅうこうくうけんきゅうかいはつきこう)」のことであり、英語表記の「Japan Aerospace Exploration Agency」から頭文字をとって略称とし、JAXA(ジャクサ)と呼ばれている。

国内外に事業所や施設を持ち、国内は「本社・調布航空宇宙センター」を筆頭に、北から
・大樹航空宇宙実験場
能代ロケット実験場
・角田宇宙センター
・臼田宇宙空間観測所
・筑波宇宙センター
・地球観測センター
・東京事業所
・相模原キャンパス
・勝浦宇宙観測所
名古屋空港飛行研究拠点
・上斎原スペースガードセンター
・美屋スペースガードセンター
・西日本衛星防災利用研究センター
内之浦宇宙空間観測所
・増田宇宙通信所
種子島宇宙センター
がある。

能代ロケット実験場の関連記事はこちら↓

t-miyazoo.hatenablog.com このうち、私は「筑波宇宙センター」の設備を利用した。

筑波宇宙センター

筑波宇宙センターは1972年に開設され、筑波研究学園都市の一画の約53万平方メートルの敷地に、最新の試験設備を備えた総合的な事業所である。

JAXAが推進する活動のうち、
●宇宙からの目となる人工衛星の開発・運用およびその観測画像の解析
●「きぼう」日本実験棟を用いた宇宙環境利用や、宇宙飛行士養成と活動推進
●ロケット・輸送システムの開発と、技術基盤確立のための技術研究推進

を行っており、日本の宇宙開発の中核センターとしての役割を果たしている。

筑波宇宙センターの全景
出典:(C)宇宙航空研究開発機構(JAXA)

筑波宇宙センター JAXAホームページはこちら↓

www.jaxa.jp

設備と利用申請について

設備の利用に関しては、(株)エイ・イー・エスJAXAとの契約に基づき筑波宇宙センター「環境試験設備等の運営・利用拡大事業」を運営しており、この(株)エイ・イー・エスに問い合わせをして設備の利用を申請する。

(株)エイ・イー・エス ホームページはこちら↓

www.aes.co.jp

筑波宇宙センターの利用可能な設備をご紹介する。
・S-1.衛星試験棟
 電磁適合特性試験設備
・S-3.6mΦ放射計スペースチャンバ棟
 6mΦ放射計スペースチャンバ
・S-4.8mΦチャンバ棟
 8mΦスペースチャンバ
 1mΦスペースチャンバ
・S-10.総合環境試験棟
 13mΦスペースチャンバ
 大型振動試験設備
 小型振動試験設備
 1600㎥音響試験設備
 6トン質量特性測定設備
 10mアライメント測定設備
 大型分離衝撃試験設備
 クリーンルームエリア使用
・C-3.構造試験棟
 旋回腕型加速度試験設備
 18トン振動試験設備
・C-4.小型衛星試験棟
 小型衛星用振動試験設備
 小型衛星用スペースチャンバ
 小型衛星用質量特性測定設備
・C-9.磁気試験棟
 磁気試験設備
・W-1.電波試験棟
 電波第1試験設備
 電波第2試験設備

私は「1mΦスペースチャンバ」を利用した。

筑波宇宙センターの構内マップ
JAXAホームページより

1mΦスペースチャンバ

そもそも、スペースチャンバというのがどのようなものかというと、「真空試験」を実施する設備である。

宇宙業界でいう「真空試験」について説明すると、宇宙空間というのは真空(気圧が無い)であり、そのような地上とは全く違う環境を模擬することで、宇宙空間で使用される機器や装置が正常に動作するかどうかを試験する設備である。

1mΦスペースチャンバは筑波宇宙センターを入門しE-1.総合案内所で受付を済ませたあと、歩道に従って南西方向へ進み、S-3.6mΦ放射計スペースチャンバ棟S-5.誘導制御試験棟の間にある歩道に入ったところにあるS-4.8mΦチャンバ棟の中にある。

1mΦスペースチャンバは1階に設置してあるが、真空状態にしたり大気圧に戻すのに時間がかかるので、そのための待機室が同じ建物の上階にあり利用することができる。

1mΦスペースチャンバはカプセル型のステンレス製で、片側が円形状の蓋になっており、ここから内部にアクセスすることができる。

内部は二重構造になっており、内側面は黒く塗装してある。

エイ・イー・エス社のホームページによると、

設備概要
1mφスペースチャンバは、地上で宇宙空間の高真空、冷暗黒を模擬する設備です。 この設備で宇宙機の熱設計の評価、耐環境性の確認を行うことができます。 高真空環境を模擬するため、極低温ヘリウムガス(20K)が循環するクライオポンプが用いられています。 冷暗黒環境を模擬するために真空容器内面に沿って液体窒素が循環する黒色のパネル(シュラウド)が用いられています。 また、クリーンブースによる清浄度管理が可能であるため、小型衛星等のフライト品の熱真空試験にも対応可能です。

設備仕様
真空容器形状:横置円筒形
真空容器内部寸法 シュラウド使用時:1,000mm(径)×1,380mm(長)
         シュラウド不使用時:1,280mm(径)×3,200mm(長)
到達圧力:1.3×10-3Pa(CP使用時)
シュラウド温度:100K以下(扉部・鏡部除く)

”(株)エイ・イー・エス ホームページ”

とある。

シュラウド使用時には、この二重構造の内側に供試体を設置することとなる。

クリーンブースでは、前室で防塵服、シューズ、キャップを装着することで、クリーンブースの中に入ることができる。

クリーンブース内からスペースチャンバの蓋を開けることで、スペースチャンバ内部での作業ができる。クリーンブースは大人2人と供試体を持ち込むのには十分なスペースがあるが、3~4人が入って作業するとなると多少窮屈と感じるかもしれない。

休憩など

お昼の休憩では、C-2.厚生棟内にある食堂やセブンイレブンを利用することができる。
このセブンイレブンヤマト運輸の集荷に対応しており、ヤマト運輸の宅急便で送れるサイズの物品であれば、ここから発送することができる。

あとがき

この記事は、私が利用した2021年時点での体験を基にしています。
最新の状況についてはJAXAへお問い合わせのうえ、ご自身にてご確認ください。