宇宙関連企業リサーチ「株式会社ispace」
代表取締役CEOの袴田武史氏のもと、200名を超える社員が集まり、2022年11月30日17:39(日本時間)にはHAKURO-Rミッション1の打ち上げが予定されている。(2022年11月25日、記事執筆時点)
公式サイト(M1打ち上げカウントダウン中)
月は言わずと知れた地球唯一の衛星であり、人類が到達したことのある唯一の地球外天体である。
地球からの距離は約38万kmであり、光の速度で約1.3秒かかる。
重力は地球の約6分の1だ。
実は、月は徐々に地球から遠ざかっており、1年あたり約3.8cmずつ離れていっている。
そんな月は、大気がほとんどないため昼夜の温度変化が激しく、昼では約110℃、夜では-170℃と、なんと200℃以上もの差がある。
月面はレゴリスという砂礫に覆われており、その厚さは数cmから数十mにものぼる。
このレゴリスの粒子の大きさはおおよそ50μmと非常に細かく、宇宙服や精密機械などに入り込みやすく、度々問題を起こす。
その様な過酷な月面であるが、人類はこれまでに12人の宇宙飛行士が月面に降り立っている。
そのすべては、アメリカ航空宇宙局(以下、NASA)のアポロ計画によるもので、そのうち15号では初めて「月面車」が使用され、27.76kmにわたる広範囲の地質学的調査を行った。
その後、1972年のアポロ17号で計画のすべては終了した。
時は経ち2004年、当時のアメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュは演説の中で、2020年までに宇宙飛行士を月面に到達させることを含む新たな宇宙開発の展望の「コンステレーション計画」を発表したが、2010年、バラク・オバマ大統領によりその計画は中止されることとなる。
そんな中、2007年から2018年にかけてGoogleがスポンサーとなり、民間による最初の月面無人探査を競うコンテスト「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エックスプライズ、略称GLXP)」が開催された。
GLXPは勝者のないまま終了したが、最終フェーズまで進んだチームのひとつが「HAKUTO」であり、その運営を行ったのが「株式会社ispace」である。
ではなぜ、ispaceは月面を目指すのか。
公式サイトではこのように記されている。
しかし、1990年代頃から「月には水がある」ことが示唆されるようになり、実際に月の極付近にある永久影(常に太陽光が当たらない領域)に水の氷が存在することが確認された。
そして2020年、NASAは成層圏赤外線天文台「SOFIA」を用いた赤外線観測により、太陽光に照らされた場所にも水が存在することを突き止めた。SOFIAは、ボーイング747-SPを改造し、口径約2.7mの望遠鏡を搭載した空飛ぶ天文台である。
SOFIAが観測したのは月の南半球にあるクラビウスクレーターの中で、SOFIAに搭載されている微光天体赤外線撮像器「FORCAST(Faint Object infraRed CAmera)」が水分子に特有の波長6.1μmの波長をとらえ、クラビウスクレーター内の砂に水が存在することを発見した。
明らかになった水の含有量は100~412ppmとごくわずかではあるが、影となっている場所だけでなく日が当たる場所にも水が発見されたことで、月全体に水が広く存在している可能性が出てきたのだ。
人が生きていくには水が必要だ。それは地球でも月でも宇宙でも変わらない。
更に、水を水素と酸素に分解することで、呼吸用の酸素やロケットの燃料を確保することができる。
月の水の存在は、人類がより遠くの星へ向かうための重要な要素になるのだ。
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月面探査は現在、「アルテミス計画」によって再び人類を月面に送ろうとしている。
「アルテミス計画」とは、NASAが提案している月面探査プログラムのことであり、2025年以降に月面に人類を送り、その後、ゲートウェイ(月周回有人拠点:月面や火星に向けた中継基地)計画などを通じて、月に物資を運び、月面拠点を建設、月での人類の持続的な活動を目指すものだ。
日本やアメリカを含む8か国は、この計画を推進するため、「すべての活動は平和目的のために行われる」ことなどをはじめとしたアルテミス合意にサインした。
このように、現在、月面探査は再び注目を集めている。
そんな月面探査と人類の活動圏を広げる取り組みを行う「株式会社ispace」に、これからも期待していきたい。